俄歩
「山に登ること」 は、与えられた条件の中で新しい経験を積むことに 他ならない。 だから、  自然と向き合える体力  自然を味わえる感性  自然に応えられる知力 を大切にしたい。
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俄歩人 (がふと)

Author:俄歩人 (がふと)
 学生時代に歩いた山、
歩きそびれた山々、
かって妻と歩いた山をひとり
静かにたのしんでいます。
年に一度、写真集「岳と花」を
記載。
(さいたま市 浦和 在住)



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裏剱  (続き)
P1010573.jpg P1010604.jpg P1010611.jpg
仙人谷        大太鼓        黒部の怪人
                                   (写真はクリックして拡大して下さい)


「山行クロニクル No.59-2」 剱沢・仙人池・雲切新道・水平歩道     単独
’10.8.24(火)立山駐車場=室堂~雷鳥坂~別山乗越~剱沢小屋(泊)
    8.25(水)剱沢大雪渓~真砂沢~二股~仙人新道~仙人池ヒュッテ(泊)
    8.26(木)仙人池~仙人谷~仙人温泉(泊)
    8.27(金)仙人温泉~雲切新道~仙人ダム~阿曽原温泉(泊)
    8.28(土)阿曽原温泉~水平歩道~欅平=宇奈月温泉=立山駅
           =北陸・上信越・関越道=浦和

仙人谷・雲切新道・水平歩道

 翌朝の仙人池ヒュッテ。
今日は仙人谷を下降、 私は途中の仙人温泉までなので、
その先 阿曽原温泉まで雲切新道を行く人、逆に仙人新道を降って真砂沢方面へ
行く人を見送り ゆっくりと朝食を自炊。
疲労が溜まっているときは流動食、昨今流行のスープカレーなどが私のお薦めメニュー。
仙人池畔で景色に溶け込みながら 深山の息吹をも充足する。

 仙人谷を降る。
残雪期は要注意ルートであるが、既に雪の消えたこの時期は特に危険な個所は無い。

P1010573_20100830135036.jpg P1010561.jpg 仙人谷を降る

 谷に注ぎ込む支流の冷たい沢水を味わいながら 仙人温泉へ。

P1010563.jpg P1010572.jpg 秘湯・仙人温泉   源泉92度 含鉄・硫黄泉

 今日一日はこの湯を楽しみ、ここで滞留。
稜線上の他の小屋と異なり、ここでは豊富な「温泉と水」を一日中掛け流し。
何とも贅沢なものである。
湯船からは谷を越え正面に白馬三山、不帰岳の突峰、不帰の嶮を左肩に曳いた唐松岳が
望める。
ここから見る唐松岳は 意外やピラミダルな山容。
夕方 恒例の驟雨。

P1010568.jpg 左に杓子岳・白馬鑓、右に唐松岳

 午後、阿曽原から雲切新道を登ってきた方々が着き、
毎年不通になり修復を余儀なくされた従来の道と異なり、
仙人谷と雲切谷の間の尾根に切り拓かれた新道の様子を聴く。

 皆、一応に この雲切新道は夏に登る道ではない、ロープ・クサリ・ハシゴが
多く、急登 急登の連続とか・・・。
そして最後に あなたは降るのですからいいですね と付け加える。
 その夜は 5人の泊客。


 翌27(金)、晴天。
雲切新道を降る。源泉口を過ぎ、まずはちょっとした尾根の小ピークへの登りかえし。

P1010574.jpg P1010578.jpg
仙人温泉小屋       旭岳(左)と白馬岳(右)を覗く

 その後は降り 降り一辺倒の急下降。
重いザックで飛び込みそうなハシゴや頼りない補助ロープを握りしめ、ブナやカエデ、
オオカメノキの枝を掴みとにかく降る。

P1010579.jpg P1010583.jpg P1010577.jpg
雲切新道 点描

 降り続けること3時間余、
やっと関西電力の高熱隧道出口や仙人ダムが見え始める。
冷たい清流に降りて汗を拭う。
確かにこの新道を登るには相当の覚悟がいる と実感する。降りでよかった。

P1010580.jpg P1010585.jpg
壁面にトンネル出口    仙人ダム上流

 熊除けの外鍵を外し仙人ダム管理棟に入り、登山者案内表示板に従い、
鉄筋コンクリートの中の迷路を右左折・上下する。
資材運搬用のトロッコ軌道を横切り、熱風が吹きつけてくる高熱隧道の横を抜け、
再び、登山道(旧日電歩道)へ出る。
黒四ダムから白竜峡、十字峡をへつり歩く下ノ廊下とここで合流する。

 またまた炎天下。関電・人見平宿舎前で清涼飲料自販機を見つけ、購入。
1時間の昼食・大休止。
この自販機は嬉しかった。冷えた飲料で活き返る。

この関電の施設、冬季は約200人が滞在、保守点検に専念すると聞く。
さらに宿舎裏を尾根まで登り返し阿曽原温泉小屋へ向かう。
約1時間強、いまや廃道となってしまった旧来の道と出会い、黒部川沿いの小屋に降る。

P1010590.jpg P1010592.jpg
阿曽原の湯        小屋直下の黒部川

 まだ雪で下ノ廊下が通過できないこの時期の温泉小屋は、明日は週末というのに
登山者は少ない。テン場も1張。
湯で汗を流した後のその夜の泊客は 私を含めて9人。
そのうち男性1、女性3の私と同年輩4人のパーティは 明日 雲切新道を
登り池の平小屋まで。その後 剱岳北方稜線ルート、小窓の頭を越え、
三の窓を経て剱岳へ登頂する という。
関西在住男女4人で合計250歳を越え最高齢の女性は71歳。

 昨年は 夏季とはいえ前穂高・屏風岩や北穂高・滝谷を登攀したというクライマー達。
寡黙なエキスパートがポツリポツリ語る言葉は私の教科書だ。
素晴らしいキャリアの方々と酒と会話が弾む。

 元山岳警備隊で 此処の小屋主 Sa氏にも
雪で塞がれた下ノ廊下に高巻きのルートを架設したり、雲切新道を切り拓いた往時の
苦労などを 楽しく聴かせてもらった一夜であった。

(追記)
 Sa氏は 下ノ廊下は黒四ダムから阿曽原へ降るより、阿曽原から黒四ダムへ
遡る方がお薦めだ という。
その理由は以下の二つ。
1.夏から秋の黒四ダム観光放水時はどうしても放水のため、上流部は水の透明度が落ちる
2.長丁場のため 足が疲れた頃は、川までの落差が少ない上流部を通過する方が安全
ということであった。


 最終日、トロッコ鉄道欅平駅までの水平歩道を楽しむ。
4~500m下の黒部川を見下ろしながら、岩壁をくりぬいたり 掛け橋を付けた
5時間余りの水平歩道。

P1010600.jpg P1010601.jpg P1010602.jpg P1010611_20100830152617.jpg
水平歩道 点描

 晴天の下、折尾の滝直下で涼み、大太鼓の奇観を楽しむ。

P1010598.jpg P1010604_20100830153018.jpg
折尾の滝      大太鼓

 雪渓が崩壊、残雪のブロックが積み重なった志合谷は 砂防堤の裏側の冷水が足首まで
流れる真っ暗なトンネル(長さ150m)をランプで抜けたり、
黒部の怪人 三大岩壁のひとつ奥鐘山西壁を眺めながら時を忘れる。

P1010607.jpg P1010608.jpg P1010609.jpg P1010610.jpg
残雪の志合谷       志合谷トンネル  対岸に刻まれた水平歩道 

 この日、水平歩道ですれ違ったパーティは僅か3組。この暑さでは無理もない。
団体観光客や家族連れで賑わう欅平を後に トロッコで宇奈月温泉まで下り、
富山地鉄に乗り換え 車を置いた立山駅に帰り着いたのは 夜7時であった。

P1010612.jpg
トロッコ軌道車



 真夏の裏剱。
岩と谷、雪渓と温泉、そして日常見られない景観と幽玄の雰囲気を満喫した日々であった。
また 小屋泊りとて、幾多の登山者、そして小屋主の方々との会話が楽しく、
同年輩の逞しい方々からは まだまだ歩けますよ と勇気づけられた日々でもあった。

                           (写真はクリックして拡大して下さい)
(了)














 






テーマ:登山 - ジャンル:スポーツ

剱沢雪渓と仙人池
P1010509.jpg P1010515.jpg P1010553.jpg
剱岳             剱沢             裏剱
                                       (写真はクリックして拡大して下さい)

 立山から入山、
室堂平・雷鳥坂・別山乗越を経て、剱沢から剱岳を・・・
大雪渓を歩き平蔵谷・長次郎谷、そして三の窓の雪渓を・・・
二股から仙人池まで登り返し、裏剱・八峰の岩峰を・・・
それぞれ眺め、
最近拓かれた雲切新道と最終日には黒部峡谷の水平歩道を歩き、
欅平から宇奈月へ下山。
途中、仙人温泉、阿曽原温泉の湯も楽しみたいと計画。

 本来は秋に相応しいルートであるが、今年は白竜峡の雪渓がなかなか溶けず
紅葉シーズンまでに下ノ廊下が通り抜けられるかどうか判らないとのことで
下ノ廊下が不可であれば 山小屋の混まないこの時期に と裏剱へと向かった。


「山行クロニクル No.59」 剱沢・仙人池・雲切新道・水平歩道    単独
’10.8.24(火)立山駐車場=室堂平~雷鳥坂~別山乗越~剱沢小屋(泊)
    8.25(水)剱沢大雪渓~真砂沢~二股~仙人新道~仙人池ヒュッテ(泊)
    8.26(木)仙人池~仙人谷~仙人温泉(泊)
    8.27(金)仙人温泉~雲切新道~仙人ダム~阿曽原温泉(泊)
    8.28(土)阿曽原温泉~水平歩道~欅平=宇奈月温泉=立山駅
           =北陸・上信越・関越道=浦和

室堂平・雷鳥坂・剱沢小屋

P1010481.jpg P1010482.jpg P1010483.jpg
別山尾根、左奥に剱岳  みくりが池         地獄谷

 室堂平は既に晩夏。それでも相変わらず登山者や観光客で賑わっていた。
みくりが池や地獄谷を眺め 雷鳥沢キャンプ場まで一旦降る。
夏休みとてほほえましい家族連れのテントも多い。

P1010489.jpg 雷鳥沢キャンプ場と雷鳥坂・別山乗越

 ここから剱岳を巻いて欅平までの久し振りの長丁場。
小屋泊りではあるが、アイゼン、自炊道具、食糧など ザックの重さが堪える。
大日連山への道を分け、別山乗越まで雷鳥坂の急登を励む。
昔、子供連れで歩いた立山三山や三年前、その肩を越え五色ヶ原~薬師岳~太郎平まで
単独縦走した龍王岳、背中には奥大日の峰。
それぞれ歩いた想い出を辿りながら まずは剣御前小屋を越え、剱沢の小屋へ。

P1010490.jpg P1010494.jpg P1010505.jpg P1010509_20100829181904.jpg
奥大日岳       立山三山(左)と右奥に龍王岳  岩と雪の殿堂標識  剱岳(手前は前剱)


 小屋で明日予定している剱沢大雪渓の状態を教えてもらう。残雪がまだ多く左岸沿いのルートは
しっかりしているとのこと。
今年は 長次郎谷の上部と北方稜線での事故が多いと言う。
夕方、一時間ほど雷雨。


剱沢大雪渓・二股・仙人新道・仙人池

 早朝、剱沢上部 剣山荘へのトラバース道の雪渓上部に熊が一頭登っていき
双方の小屋の緊急交信が続いたが、20分ほどで「くろゆりのコル」の方へ消えて
いった。あのくらい速くしっかりと尾根を登れるのは羨ましい限り。

P1010512.jpg アオノツガザクラ

 まだ 花の残るガレた登山道を雪渓まで降り アイゼンを着ける。
スプーンカットで波打った大雪渓が遥か下まで続いている。
ここから真砂沢ロッジまで 2時間の雪渓散策である。

P1010513.jpg P1010514.jpg P1010515_20100829190617.jpg
剱沢・上部          中部            下部

 途中、平蔵谷や長次郎谷の雪渓を見上げ、ピッケル片手に攀じる若人を想像する。
真砂沢出合手前のクラックを避け、一旦、夏道へ上がる。
降ってきた雪渓を振り返る。降雪期の純白であったならどんなにか美しいことだろう。
クラックを高巻きして再び雪渓を歩き 真砂沢ロッジで一服。
陽射しが暑い。

P1010518.jpg   P1010521.jpg   P1010520.jpg
平蔵谷          長次郎谷        剱沢大雪渓を振り返る

 ここまで昨夜同宿、池の平小屋へ向かうという横浜の女性二人組 と 剣山荘から
降りてきて同じ仙人池ヒュッテへという単独男性と相前後した。
逆に登ってきた人は単独男性二人のみ。
これから真砂沢を出て室堂へという4~5人のパーティが二組であった。

 針ノ木雪渓ほど斜度はないが剱岳の左俣や右俣に通じる残雪の谷を見上げながらの
快適な雪渓漫歩であった。

 この先、二股までの南股は、三ノ沢のスノーブリッジがしっかりしており
右岸に渡らずそのまま直進、四ノ沢の河原を越え二股吊橋を渡り近藤岩に着く。

P1010528.jpg P1010535.jpg   P1010534.jpg P1010537.jpg
二股吊橋          近藤岩              三の窓雪渓     「幻の剱大滝」方面 

 仙人新道の急登を前に 三の窓の美しくも厳しそうな雪渓を眺めて昼食、大休止。

 炎天下の急登、約800m、仙人新道は牛歩というより蝸牛。
水をガブ飲み 大汗を流し、青息吐息。
三の窓雪渓の絶景が無かったら・・・、救いのない状態であった。
通常の倍近い時間を掛け仙人峠に辿りついたときは しばらくへたり込んでしまった。

P1010539.jpg P1010541.jpg 仙人新道から三の窓雪渓を覗きこんでは息を継ぐ

P1010543.jpg へたり込んだ仙人峠から仙人池ヒュッテを眺む

P1010548.jpg P1010559.jpg
仙人池からみた裏剱・八峰の岩峰    剱岳三の窓 左にチンネと八峰の頭

 ここは紅葉の名所、小屋主50年を越える「仙人池のかあちゃん」ことSさんに逢いに来る
常連さんで 毎年10月は満杯のようだ。
今日も夕方4時頃から雷雨。
「ホテル立山」でアルバイトをしていたという健脚の青年が最後に到着、
その夜の泊客は6人。

 池の平から小窓、三の窓を越え剱岳に至る 所謂北方稜線ルートを歩く人は皆、
池の平小屋に泊るようで 6人の中にはアタックする人はいなかった。
皆、私同様、八峰の岩峰を間近に眺めるだけで満足のようだった。
「山は 毎日毎日異なり その良さが味わえる・・・」という傘寿を迎えたSさんの
言葉が心に残る。

P1010553_20100829201255.jpg
                          (写真はクリックして拡大してください)

(続く)





        






                      

















テーマ:登山 - ジャンル:スポーツ