俄歩
「山に登ること」 は、与えられた条件の中で新しい経験を積むことに 他ならない。 だから、  自然と向き合える体力  自然を味わえる感性  自然に応えられる知力 を大切にしたい。
プロフィール

俄歩人 (がふと)

Author:俄歩人 (がふと)
 学生時代に歩いた山、
歩きそびれた山々、
かって妻と歩いた山をひとり
静かにたのしんでいます。
年に一度、写真集「岳と花」を
記載。
(さいたま市 浦和 在住)



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火打山
2007_0703火打山0018 笹ヶ峰牧場からみた火打山

 昨年(’07年)7月初めに友人と歩いた 頚城三山のひとつ火打山(2462m)の山行記録
です。(写真はクリックして拡大してください)

「山行クロニクルNo.11]  火打山          
’07年 7月1日(日)~7月3日(火)  2泊3日        友人と2人

7.1(日) 浦和~上信越自動車道 妙高高原IC~笹ヶ峰牧場(泊)
7.2(月) 笹ヶ峰~十二曲り~富士見平~高谷池~天狗の庭~雷鳥平~火打山頂~
       高谷池ヒュッテ(泊)
7.3(火) 高谷池~茶臼山~黒沢池~富士見平~笹ヶ峰~浦和

7.1(日) 第一日目
 大学時代の友人 Mさんに、一度、残雪と花の山に登りたいので と頼まれ、新潟と長野の
県境 頚城山塊の主稜、火打山を選んだ。ここしばらく単独行ばかり続いていたが久し振りに
全行程をパートナーと歩くことになった。
登山基地は妙高高原の笹ヶ峰牧場。大学時代、サークル仲間と1週間の合宿、その合間に
10人ほどで妙高山に、さらに少人数で火打山にも登った懐かしい想い出の地。
 今回はその火打山を目指す。2500m級では妙高に比べ、初心者でも比較的楽に登れる
山である。

 昔、合宿所にした明星荘で遅めの昼食。小屋は新しく建て替えられ、大黒柱と囲炉裏だけ
が黒光りする昔のままで残されていた。
当時、小屋の親爺さんにしゃくなげの手作りパイプを貰いましたよ と小家主夫妻に話したら
私達の父ですよ とすぐ話が弾んだ。親爺さんから、パイプに適したしゃくなげの枝の選び方
を教わったり、ドラム缶の風呂に女子部員を入れるための緊急のカーテンを吊ったり・・・。

 笹ヶ峰牧場はまだ放牧しておらず、静かに霧に包まれていた。新しく出来た近くの県民の森
に宿を取り、足慣らしに牧場周辺を2時間ほど散策、ギンリョウソウを見つけ写真に撮る。
葉緑素をまったく持たない透き通った銀白の背丈3cmほどの花。撮影後、Mさんは陽のあた
らないようまた上草や枯葉を戻していた。岳には登らないが牧場や池、小さな沢を巡る散歩道
を楽しんでいる各年代のカップルが多い。皆、牛がまだ放牧されていないのを残念がっていた。
2007_0703火打山0001  2007_0703火打山0002
霧の笹ヶ峰牧場       ギンリョウソウ

7.2(月) 第二日目
 朝食を弁当にしてもらって登山口を6時30分に出発、曇天。
見事なブナ林の中の木道を歩き始める。この時期の新緑も良いが秋の紅葉はさぞ素晴らしい
だろうと想う。四季折々の山で、序章としてのアプローチでブナの林を歩くことが多いが、
私はこのブナの林が好きだ。
 まだ、残雪の中、雪解けを待たずに芽吹く力強さ 春、陽春の光にキラキラと輝く若葉 
梅雨時の厚く濃い緑、 そして強風の後に その花粉が水溜りに美しい黄緑の文様を画く夏
秋は、実をつけ 黄、橙、赤、茶と一枝に彩り鮮やかなパッチワークを見せる。
カラマツやカンバのように淋しさを感じさせない。ブナの森は山へ這入る者にいつの季節も
澄んだ感覚を呼び起こしてくれる。

 黒沢から十二曲がりを越え徐々に高度を稼ぐ。シラビソやトウヒの針葉樹林帯は梅雨の
影響で登山道はグチャグチャ。岩場の急登にかかり、自称短足のMさんは苦労するが7キロ
余を担いで元気そのもの。3時間余りで尾根に出て富士見平に着く。
残念ながら霧と雨で眺望はない。黒沢池を経て妙高山に至る道を分け、高谷池~火打山へ
の道を辿る。
 小雨の中、高谷池へ向かう道はダケカンバと背の低いオオシラビソが目線を遮り、根曲り竹
の新芽がピンピン跳ねて歩きにくい。それでも足下は白いキヌガサソウやサンカヨウ、ところ
どころにベニバナイチゴの赤い花が混ざる。雨に濡れ透き通った白さの小粒の花々が緑葉の
上で揺れるサンカヨウはとりわけMさんの気に入りとなったようだ。

2007_0703火打山0003  2007_0703火打山0004
サンカヨウ           キヌガサソウ

 11時、高谷池ヒュッテ着。宿泊手続きを済ませ、小屋で弁当を広げる。雨が激しくなり
しばし様子見。湯を沸かしコーヒーを楽しむ。眺望は望めなくとも 今日山頂まで行きたい と
張り切るMさんに従い、ザックを預けサブザック一つの身軽になって雨と濃いガスの中、小屋
を飛び出す。小屋番は この雨のなかをサポート役は大変ですね と視線を送る。

 高谷池はミズバショウが盛り、池塘に雪田が残る天狗の庭はハクサンコザクラとイワイチョウ
が真っ盛り。イワイチョウは小さい漏斗のような若葉を一面に拡げて絨毯を敷き詰めたよう。
その中に白い花がすっと伸びている。
ハクサンコザクラは雨に打たれ下を向いていたがそれでも十分楽しめた。

2007_0703火打山0017ハクサンコザクラ

 コバイケイソウやナナカマドの白い花、峰サクラの淡いピンク、コイワカガミの桃色、ベニバナ
イチゴの赤紫、ミヤマキンバイやウサギギクの黄色。
ガスに包まれて周囲の見えない単調さを花々が慰めてくれる。頚城火山群の中にあって女王
と言われるに相応しく火打山は花の山だ。

 雷鳥平で霧が出ているので雷鳥に遇えるかもと期待したが、午後だったせいか声も聞こえ
ず姿も見えず、残念。頂上直下、急傾斜の150mぐらいの雪渓を慎重にクリア、その後、
Mさんを先頭にして山頂へ。
 100平方mほどの山頂は雨と白霧、ケルンと標識がひとつずつ三角点の傍らにあった。
360度の展望を誇る周囲の遠景は見られなかったが、岩場、高層湿原、花畑、雪田・雪渓、
ガレ場と変化のある山歩きを十分堪能してくれたようだ。
丹沢ばかり歩いていないでたまにはこの種の山を楽しんでください と言ったら、丹沢の山々
にも良いところがあります と気色ばまれてしまった。

 降りで見た 霧の中、大小の池塘の傍らに佇む三角屋根の高谷池ヒュッテの遠景は一幅
の絵画だった。
4時半、小屋に帰着。満足、満足と呟くMさんの夜食の健啖ぶりは見事。底抜けに明るい。
でも雑魚寝の山小屋泊まりは初体験とか。
昨1日が妙高山の山開きだったので結構宿泊者が多いのではと思ったが、その夜の泊まり
は4パーティ 10人。一晩中小雨。

2007_0703火打山0013高谷池とヒュッテ

7.3(火) 第三日目
 朝食後7時に小屋を出て、茶臼山(2171m)経由で黒沢池まで足を伸ばす。
この道は歩く人が少ないのか先頭を行く顔にときどき蜘蛛の糸がかかる。小枝を拾い顔の前
でタクトのように振って歩く。ほどなく雨も上がり、雲が流れ、切れ切れに薄日が臨まれるよう
になった。まだ遠望は利かず、傾斜の少ない尾根道は相変わらずぬかるんでいたが花々が
目を惹きつける。エンレイソウの群落は珍しい。
 黒沢池のドーム型小屋の前で休憩。根曲がり竹があちこち新芽を立ち上げている。
昨日は雨の中停滞していたパーティがこの根曲り竹を集めお土産を作っていたが、ここのは
ちょっと細いので我々は採取を止め、帰途 売っているのを買うことにした。

 黒沢池の高層湿原はチングルマ、ワタスゲが目立った。草地にはハクサンチドリ。
この黒沢池は 高谷池とはまた異なった美しさを見せてくれた。紅葉の秋は高谷池よりも
きっと美しいだろうと想う。
 
 昨日の分岐点、富士見平に10時着。高谷池を出てからここまですれ違う登山者は皆無。
降りは弱いというMさん こんな急な所を登ってきたのかしら とお尻を滑らせながら岩場を降る。
途中、登ってきた3組のパーティと挨拶を交わす。熟年男女8人組みはチリンチリンと熊除け
の鈴が姦しい。おしゃべりだけで熊は寄ってこないと思えるがファッションなのかもしれない。
12時、笹ヶ峰登山口帰着。薄日が射して暑い。

 二日前の県民の森ロッジでビールで乾杯、昼食。火打山のあれこれを語り合う。
火打山には荒々しさがまったくと言ってよいほど見られない、いかにも女性的な美しさに満ち
た山であった。世界各地を歩いているMさんも日本の山の繊細な美しさを見直したようだ。
私にとっては 学生時代に合宿した牧場と山。その地を再び学生時代の友人と歩き、
遥かに過ぎ去った青春の日々を想い起こす山行となった。

 2時、四十数年ぶりに訪れた笹ヶ峰を後に帰宅の途へ、よる8時過ぎ浦和帰着。
ここ一ヶ月 雨の山行ばかり、2週間後に予定している 室堂~五色が原~薬師岳~太郎平
縦走は天候に恵まれますようにと願う。




   

  

テーマ:登山 - ジャンル:スポーツ